くるみ乳児院では“子どもの権利条約”に基づき、すべての「子どもの最善の利益」が尊重されることを基本にしています。
わたしたちのお父さんとお母さんがある日出会い、そしてわたしたちが生まれました。
わたしたちの中にはお父さんやお母さんがわたしたちの誕生を心から待ってくれていた場合もあり、また不安と戸惑いのままお母さんひとりっきりで産んでくれた場合もあります。
わたしたちは生まれてからまだ少ししかたっていませんが、わたしたちの中にはすでにお父さんがそばにいない子もあり、お母さんがそばにいない子もあります。
わたしたちはお父さんやお母さんが働かなければいけなかったり、病気だったり、家族の人が入院したりしてどうしてもわたしたちを育てられなくなって、突然ここに来ました。
ふつうわたしたちは“赤ちゃん”と呼ばれ、家庭ではお父さんお母さんに愛され、いろいろと助けてもらって生活しますが、ここではお父さんお母さんから離れて、たくさんの友だちと24時間大きな集団で生活しています。
わたしたちは泣きたい気持ちや甘えたい気持ちをちょっぴり押さえながら精いっぱい頑張っています。
どうかわたしたちの真剣な生活ぶりを認めて、ひとりひとりが主人公として大きく豊かに育っていけるよう手を貸してください。わたしたちを愛してください。そして生まれてきてよかったと思えるように温かく見守ってください。
わたしたちのことをわかってください
わたしたちは愛されたいと思っています。また、わたしだけの人を求めています。
わたしたちは、いつも自分のことを見ていてほしいと思っています。
わたしたちは、お父さんやお母さんから離れて暮らしています。悲しくて泣いていたり、寂しくて泣いていたりすることがあります。
わたしたちは、心も身体も成長している途中です。だからあなたにとってあたり前のこともわたしたちはできません。
わたしたちは、言葉を使ってのコミュニケーションがまだうまくいきません。だから、わたしたちはあなたの言うことがよくわからなかったり、自分のしたいことや気持ちを、泣いたり物を投げたりかみついたり手足をバタつかせたり全身を使って表します。
わたしたちの世界はいつも新鮮で生き生きとしていて、驚きと感動に満ちています。わたしたちは「いま」を生きています。だから過去や未来のわたしたちの話をされてもわかりません。
わたしたちはまだ時間の流れがよくわかりません。でも、見通しを持った行動は少しずつできるようになっていきます。
わたしたちは、失敗をくり返しながら新しいことができるようになります。
わたしたちは、離れていたお父さんやお母さんと暮らし始める時に、今までできていたことができなくなったり、わざと無理なことをいって困らせたりします。 |
わたしたちは、あなたにお願いします
わたしたちの肌・目・髪の色や障害のあることで偏見を持たないでください。
わたしたちは、ひとりひとり発達のしかたや性格がちがいます。ひとりひとりを見つめて、ひとりひとりに合わせてやさしく接してください。
わたしたちを他の子と比較したり、発達の目安やあなたの子ども観と比較して、いやがったり叱ったりしないでください。わたしたちのありのままをまるごと受けとめ、わたしたちが自分のことをだめだと思ったり、嫌いになったりしないような接し方をしてください。
わたしたちの名前は呼び捨てにはせず、愛をこめて呼んでください。
わたしたちは、あたたかい雰囲気の中で安心して育ちたいと思っています。わたしたちのまわりは、いつも笑顔があふれているようにしてください。
わたしたちが泣いていたら、そばに来て、まず抱いてください。そして、泣いているわたしたちの思いをしっかりうけとめてください。
わたしたちに関わる時は、乱暴にしないでやさしくていねいに接してください。
わたしたちと一緒に歌をうたったり絵をかいたり、楽しくいっぱい遊んでください。
わたしたちのしたくないことを無理にさせないでください。
わたしたちは、まだしてよいこと、してはいけないことがわかりません。また、何度も同じ失敗をしてしまいます。大きな声で怒ったり叩いたりしないで、わからないかもしれないけれど、少しずつくり返し理解できるように教えてください。
わたしたちに離れたところから言葉だけで命令したり、あなたの都合で「早く?しなさい」と急がせたりしないでください。また、あなたの思いどおりに行動しないからといって叱らないでください。
わたしたちは、目に見える変化をしていない時も、目に見えないところで大切な積み重ねの作業をしています。その時期も温かくしっかり見守ってください。そして、新しいことができるようになった時は一緒に喜んでください。
わたしたちと話す時は、「?したい」「?できるんだ」と力がわくように言ってください。
わたしたちが植物や動物とふれあう喜びを感じられるようにしてください。
わたしたちがお家で育つ子と同じように、できるだけ多くの生活経験や社会経験ができるようにしてください。
わたしたちの大好きなお父さんやお母さんのことをわたしたちの前で悪く言わないでください。わたしたちが今まで以上にお父さんやお母さんのことが好きになれるように、いっぱいお話してください。
わたしたちのお父さんやお母さんにとって、わたしたちのいない生活があたり前にならないように、こまめにわたしたちの様子を知らせてください。
わたしたちのお父さんやお母さんがわたしたちにたびたび会いに来てくれたり、外出や外泊をさせてくれるように働きかけてください。
わたしたちがお父さんやお母さんを困らせ、試すことは、新たな親子関係をつくるためにとても大切だということを、お父さんやお母さんにしっかりわかってもらってください。
わたしたちがここに来た理由を他の人に話さないでください。
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わたしたちのお父さんお母さんのことについてお願いします
わしたちのお父さんやお母さんの肌・目・髪の色や生まれた場所、障害があること、また、ものの見方や考え方、宗教などで偏見を持たないでください。
わたしたちのお父さんやお母さんの中には、小さい時から温かい家庭で育つことができなったり、うまく人間関係がつくれなかったり、辛い思いをしながら必死で生きてきた人もいます。だから、わたしたちとどう関わっていいかわからないことも多いのです。あせらずにゆっくりと、わたしたちのことが大切に思えるように助けてください。
わたしたちのお父さんやお母さんは、いつもわたしたちと一緒にいたいと思っています。その気持ちをまず受けとめてください。そして、わたしたちのことを知りたいと思う気持ちや会いたいと思う気持ちを大事にして、安心できるよう様子を伝えてください。
わたしたちのお父さんやお母さんはわたしたちのことを憶(おも)い、精いっぱい頑張って暮らしています。それを認めて、声に出して評価してください。
わたしたちのお父さんやお母さんが、あなたの考える父親や母親のイメージとちがっているからといって、お父さんやお母さんの立場や気持ちを考えずに、こうあるべきだと言ったりせず、何があってもまず受けとめてください。
わたしたちのお父さんやお母さんが、わたしたちを預け、離れて暮らす辛い気持ちを、お父さんやお母さんのまわりの人にわかってもらってください。
わたしたちのお父さんやお母さんがわたしたちと一緒に暮らせるようになるまでに、不安なことが少しでも少なくなるよう、どんな相談にも気軽に応じてください。また、わたしたちと一緒に暮らすようになってからも、困ったことがあったらいつでも相談にのってください。
わたしたちのお父さんやお母さんが、他のお父さんやお母さんとお互いに励まし合えるように、交流できる場をつくってください。
わたしたちのお父さんやお母さんのことについて、他の人に知られることのないようにしてください。
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わたしたちのかわりにお願いしてください
子どものことで困ったことがあった時、どこに相談したらいいのかわからない人がいます。乳児院のことをもっと多くの人に知らせて、利用しやすいようにしてください。
わたしたちのひとりひとりが大切にされ、いろいろ経験ができるように、わたしたちに関わってくれる人を増やしてください。
わたしたちのために、のびのびと生活できる場所をつくってください。また、病気やけがをした時にゆっくり安心して休める場所もつくってください。
わたしたちとうまく関われず、どうしていいのかわからないお父さんとお母さんの心の援助をする仕組みを作ってください。
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「くるみ乳児院憲章」の子どもの養育の指針とするものとして
45年の歴史あるすみれ乳児院の老朽化と当法人の事業展開に合わせ、2011年「社会的養護の課題と将来像」の中で小規模化が進み、2017年7月1日にすみれ乳児院から分割し、くるみ乳児院が開所しました。
引き続き「すみれ乳児院憲章」を養育の柱とし、名称を「くるみ乳児院憲章」と改訂します。
2017.7.1